穀雨

二十四節気【穀雨】
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穀雨(こくう)

  • 4月20日頃
  • 黄経30度

穀物を成長させる、春の優しい雨が降る頃。

二十四節気が成立した当時は「秋に蒔いた麦などの穀物に春の雨が降り注いで成長を促すさま」として、その自然現象を「穀雨」と表現したが、中国文明が発達し農耕が盛んになってくると「稲の生長を助ける雨」という解釈に変わっていった。

日本では米作が中心なので「清明の頃に蒔いたもみが発芽する頃で、その成長に欠かせない春の雨がたっぷり降る時期」という意味を持ち、穀雨は「種蒔きの頃」としても重要視された。

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穀雨の七十二候

初候:葭始生

【時期】4月20日~24日頃

【読み】あしはじめてしょうず

【意味】水辺にあしが生え始める

穀雨初候

あし」は、「葦」や「蘆」とも表記される、河川及び湖沼の水際に生えるイネ科ヨシ属の多年草です。

4月下旬に発芽し6月頃までにおよそ2~3メートルにまで急激に成長します。地下茎は水平方向に絡み合って成長し、根は地中深くまで伸び、地下深くからも水を吸い上げます。

そのため土地の乾燥や塩分、酸素不足にとても強い植物です。また上に向かって伸びる茎は柔軟なため折れることがなく、風で地面に倒されても起き上がって成長します。

水面に現れる新芽は鋭く尖っていて牙や角に見えることから、「葦牙あしかび」や「葦角あしづの」とも呼ばれます。「葦牙あしかび」は芽吹いてから急激に伸びるため『古事記』や『日本書紀』で生命力や成長力の象徴として書かれています。「かび」はカビと同じ語源で、醗酵するまたは芽吹くという意味があります。

和銅6(713)年に出された「好字二字化令」により、人名や土地の名前に縁起のよい漢字2字を用いる好字が一般化しましたが、この時に「アシ」という読み方が「悪し」に通じるとして、「ヨシ」と呼ばれるようになりました。現在、標準的な和名としては「ヨシ」が用いられますが、関西地方ではお金を意味する「お足」に通じるとして、「アシ」の名前が残っています。

次候:霜止出苗

【時期】4月25日~29日頃

【読み】しもやみてなえいずる

【意味】霜が降りなくなり苗が育つ

穀雨次候

暖かくなって霜が降りなくなり、稲の苗がどんどん成長していきます。田植えの準備が始まって、農家は忙しくも活気があふれだす頃です。

末候:牡丹華

【時期】4月30日~5月4日頃

【読み】ぼたんはなさく

【意味】牡丹ぼたんの花が咲く

穀雨末候

古代中国では「百花の王」ともいわれた、艶やかな大輪の花を咲かせる牡丹ぼたんが咲くころです。

牡丹の「牡」は、牡牝(雌雄)のオスで、丹は赤色を意味します。

直径10cm〜20cm以上にもなる大きな花を咲かせる牡丹は、接ぎ木でしか同じ色の花を増やせなかったため、種を作るのが難しい花ということで「オスの花」とされました。

花名の由来は男性的ですが、牡丹は女性に例えられることが多い花でもあります。牡丹の花言葉は「王者の風格」や「富貴」の他に「恥じらい」があります。絹のような柔らかな花びらが何重にも重なり、閉じている蕾が花の中央を隠すように少しずつ開いていく姿が、恥ずかしがっているようにも、奥ゆかしくも感じられたようです。 

「立てば芍薬、しゃくやく座れば牡丹ぼたん、歩く姿は百合ゆりの花」という美人を形容する言葉が有名です。これは花の咲く順番が「牡丹(4月末~5月初)→芍薬(5月中旬~6月末)→百合(6月~8月)」のため、「座っている美人が立ち上がって歩く」という流れに沿っていて、「姿だけでなく立ち居振舞いも美しいさま」をあらわす言葉です。

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